【寄稿】「2050年 未来新聞」を作ろう~NIEがつなぐ思考と共生への問い~
当協会の三好正文理事が神戸新聞記者だった2025年度、甲南小学校(神戸市東灘区)の4年生(現・5年生)を対象に、数回にわたってNIE(教育に新聞を)の出前授業を行いました。その4年生たちが、NIE活動の締めくくりとしてこのほど、「2050年 未来新聞」を製作しました。国内外の出来事に対する関心の深さや、新聞製作のスキルの高さ――。子どもたちの成長ぶりが感じられる秀作ぞろいです。今回の取り組みについて、同校の田代弘子司書にご寄稿いただきました。
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2025年夏の「NIE全国大会神戸大会」で、ビブリオバトル(書評合戦)の新聞版「シンブリオバトル」の公開授業を行った甲南小学校(神戸市東灘区)の4年生たち(現・5年生)。続く2学期には、大阪・関西万博関連の新聞記事から「自分なりのパビリオン」を構想し、お互いのアイデアを知る活動を通して、世界や未来への関心を広げてきました。
そして3学期には、日本新聞協会NIE実践校としての2年間にわたるNIE活動の集大成として、「未来」をテーマに据えた取り組みを行いました。
まず、新聞記事から各自が気になる社会課題を探してスクラップを開始。NIEノートに並んだのは、平和への願いが込められた「イラン情勢」、食卓の未来を守る「耐暑性米の研究」、空への憧れを形にする「ロケット技術」、地球を守るための「環境対策」などでした。どの記事も、子どもたちが「自分たちの未来」に直結するものとして真剣に選んだものばかりです。それぞれのノートには、自分の考えや疑問、解決策、そして「友達に伝えたいこと」をびっしりと書き込んでいました。
その後の「シンブリオバトル」では、子どもたちの明らかな成長を実感しました。発表を聞く姿勢はもちろん、質問の質が格段に向上していたのです。「なぜこの記事を選んだのですか」といった、取り組みの初期によく見られた形式的な質問は姿を消し、記事の内容をさらに深掘りするような本質的な問いが飛び交いました。
そこで次の取り組みとして、バトルの勝敗を決めるのではなく、自分たちが選んだ課題を解決した「今と地続きの2050年の未来新聞」を製作することにしました。2050年、彼らは社会を担う中核世代となっています。自分たちが生きる未来を、自分たちの手で描こうという試みです。
製作が始まると、子どもたちの議論は教師の想像を超えて加速しました。「誰もが読める新聞にしよう」という一人の提案をきっかけに、「やさしい日本語にしよう」「小さい子向けにふりがなをふろう」「高齢者の方のために文字を大きくしよう」と次々に意見が出ました。さらに、「目が不自由な人のことも考えなきゃ」という声が上がり、自分たちの声で記事を読み上げた音声が聞けるQRコードのリンクを紙面に貼り付ける工夫まで見られました。休み時間を返上して制作に没頭する姿には、強い主体性と頼もしさを感じました。
完成した新聞を起点に、クラスごとに討論会も実施しました。4年1組では「地球は滅亡すると思うか」「子どもに選挙権は必要か」といった社会制度や環境に関するテーマが、2組では「家事をすべてロボットがしてくれる未来は幸せか」「すべての人が過ごしやすい街の工夫」といった生活に密着したテーマが挙がりました。
特に「ロボットによる家事」の議論では、「家族の時間が増える」「人間にしかできないことに時間を使うべきだ」という賛成意見に対し、反対派からは「人間としてのこだわりはどこへ行くのか」「何でもロボットがやっていたら、子どもはロボットを母親だと思ってしまわないか」という鋭い指摘が出されました。議論は最終的に「愛とは何か」「家族とは何か」という、人間としての根源的な問いにまで発展しました。
新聞を通じて社会を見つめ、他者と対話し、未来を構想する。この1年間の歩みが、子どもたちの中に確かな種をまいたと確信しています。これからも、自分の頭でしっかりと考え、多様な人々と手を取り合いながら歩んでいってほしいと願っています。
田代弘子(甲南小学校司書)(2026年4月20日)

[写真説明1]未来新聞を製作する子どもたち=2026年3月6日、甲南小学校

[写真説明2]未来新聞の発表会=2026年3月9日、同

[写真説明3]完成した「2050年 未来新聞」の一例
完成した「2050年 未来新聞」(PDF) ※一部加工しています
