【寄稿】呉空襲の紙芝居を継承~はがき新聞づくりで「平和観」鍛える NIE全国大会広島大会から
2026年7月31日、広島市で開かれた「第31回NIE全国大会広島大会」の分科会。広島県呉市立呉中央小学校の高下千晴主幹教諭(日本新聞協会NIEアドバイザー)は「平和観を鍛えるNIE学習」と題して実践発表した。内容は昨年度、同市立荘山田小学校に勤めていたときの実践。1945(昭和20)年7月の呉空襲を題材にした紙芝居「ふうちゃんのそら」の実演に6年生が挑戦し、「平和」について考えたことなどを3回にわたって「はがき新聞」にした。発表では、はがき新聞の内容が変化し、児童たちの「平和観」が醸成されてゆく様子が紹介された。発表内容を報告する。
呉空襲は45年3月から終戦にかけて計14回行われた。市街地への焼夷弾攻撃は7月1日深夜から2日未明にかけて。約4千人が犠牲になったとされる。「ふうちゃんのそら」は当時7歳だった、中峠(なかたお)房江さんの体験がもとになった。辺りが真っ赤に染まり爆発が続く中、姉とともに防空壕に逃げた。中峠さん自身が子どもたちに紙芝居の実演を続けている。戦争の残酷さを追体験させるのではなく、平和への思いを手渡してゆくために。
高下教諭は3つの場を設け、授業を展開した。1つ目は「平和について考えるきっかけとする場」。中峠さんの紙芝居を観た児童たちが、自分たちも演じたいと準備する。2つ目は「平和について自分の考えをみつめ直す場」。はがき新聞づくりに取り組んだ。3つ目は「平和について他者と語り合い、自分の考えを発信する場」。児童たちが実際に「ふうちゃんのそら」を実演した。家族や先生に向けて、他校も含む同じ世代に向けて、あるいは下級生に向けて。
はがき新聞ならではの効果
はがき新聞は、はがきサイズの用紙に短い記事や感想を書き、新聞形式で表現する。3回にわたったはがき新聞づくりは、どんな教育効果があったのだろう。
初回は、自分たちで紙芝居に取り組む段階で作成した。内容は紙芝居の演じ方やどのように工夫するかが中心だったという。ここで高下教諭は、呉空襲や紙芝居を語り継ぐ活動に関する新聞記事を提示し、「戦争の記憶を伝える」意味を考えさせる活動を展開した。
すると2回目は、紙芝居を語り継ぐ活動にどう向き合うか、活動にこめた自分の思いが登場する。まとめとして作成した3回目では、児童が自分なりに考える平和について具体的に表現するようになったという。
高下教諭は「平和観」は教師が鍛えるものではなく、子ども自身が鍛えるものと言う。そのためには子ども自身が繰り返し問い直すことが大切で、本授業はそれを実践したものといえる。
高下教諭は、はがき新聞のメリットについて、見出しに各児童の「平和観」が端的に表される▽作文と異なり、読み手を意識して書く――の2点を挙げた。読み手を意識すると、「伝えたい」という動機の面はもちろん、相手が読みやすいように表現を工夫する点でも高い効果があると思う。
この3枚のはがき新聞は「未来の自分宛て」でもある。ポートフォリオ(自身の作品集)として、自身の変容を見比べることができる。キャリアパスポートの中にまとめられ、児童たちは卒業後、中学校へ持参したそうだ。
実践発表後の助言で、長崎大学の新谷和幸准教授は「『書いては消す』、じっくり新聞を作る体験が自分と対話する場となり、児童の平和観を鍛えたのではないか」「中峠さんが紙芝居を通して伝えようとすることが、児童がはがき新聞を通して伝えたいと思うことに引き継がれた」とまとめた。
「NIE神戸大会」から広がる連携
続いて、愛徳学園小学校(神戸市垂水区)の彦野周子教諭(日本新聞協会NIEアドバイザー)が講評した。
昨年夏の「第30回NIE全国大会神戸大会」で、同校と同じ敷地にある愛徳学園中学校の両校は「中学3年生と小学6年生が伝え合う原爆と平和」をテーマに実践発表した。毎年、広島に修学旅行に行く中3生が現地で学んだことをもとに新聞を作成し、「平和」について小6生と話し合う取り組みである。このとき、高下教諭に助言いただいた。
これが契機となって、今年2月、今回の荘山田小6年生と愛徳学園小6年生(いずれも当時)がオンラインで交流する授業が実現。荘山田小側は「ふうちゃんのそら」を実演し、はがき新聞を紹介した。愛徳学園小側はユニセフによる世界的な取り組み「Poems for Peace〜平和の詩〜」について学習、作成したはがき新聞を披露した。
講評で彦野教諭は「はがき新聞は書くことが苦手な児童も取り組みやすく、伝えたいことを児童自身が精選できる」と強調。さらに「平和観は『わかった』にとどまらず、『わからない』ことと向き合うことが重要」とまとめた。
NIE神戸大会での愛徳学園小中学校の実践発表が単発で終わらず、広島とご縁ができたことをうれしく思う。被爆81年、「ヒロシマ」についての平和学習も続けていきたい。愛徳学園の児童・生徒が「平和への思い」を発信し続けられるように。
廣畑 彰久(愛徳学園中学校・高等学校教諭)(2026年8月18日)
◆「第31回NIE全国大会広島大会」分科会の記事と、当協会の三好正文理事の報告はこちら
[写真説明1]「第31回NIE全国大会広島大会」で実践発表する広島県呉市立呉中央小の高下主幹教諭(奥)=いずれも広島国際会議場(広島市)

[写真説明2](右から)彦野教諭、高下主幹教諭、中峠さん、「ふうちゃんのそら」を監修した関家ひろみさん(呉かみしばいのつどい代表)

